美月は二人を見上げる
さっきまでバーベキューをしていた二人
今は美月が知らない仕事の顔になっている
なんか……
二人ともかっこいい……
このイベントは、推せるわ
美月は手を合わせて拝む
「ありがたや~ありがたや~」
真帆が小声で美月へ囁く
「ねえ」
「なによ」
「今、目が離せないんだけど」
「やっぱりこの二人」
「BL的な何かがあるんじゃない?」
「ないから!」
「今のやりとりでなんでそうなるのよ!?」
「真帆はBL物ばっかり見過ぎなのよ!」
「美月も人のこと言えなくない?」
「今、なんか拝んでたじゃん」
「うるさいな!」
「せっかくの余韻が薄れるでしょ!」
達也は笑いながら椅子へ座り直した
「ほら」
「肉焦げるぞ」
真帆が慌てて声を上げた
「あーーー!」
「そっちは下味つけてるから」
「そんな焼き方しちゃだめだよ!」
「え?」
「焼くだけじゃねえの?」
「もう!」
「私がやるから貸して!」
真帆が達也からトングを取り上げる
「なんだよ」
「俺だって焼けるって」
「はいはい」
「達也さんは味付けしてない方だけ焼いてよ」
「ちゃんと離して置いといたでしょ?」
「いつの間にこっち持ってきたのよ」
「なんで俺は怒られてんだよ」
真帆は呆れたように息を吐き
達也から取り上げたトングで
網の隅に肉を寄せた
達也も別のトングを取って肉を焼き始める
その横で
怜司だけは立ったままだった
怜司は美月を見る
そして
ゆっくりと美月の前へ歩み寄った
美月は座ったまま怜司を見上げる
「美月」
「な、なに?」
「来週の最終プレゼンに来てくれないか」
「私が?」
「ああ」
「最終プレゼンは一般にも公開される」
怜司はまっすぐ美月を見る
「美月に見届けてほしい」
美月は痛いほど高鳴る胸を押さえた
一瞬
肉を焼いている達也へ目を向ける
私は……
達也さんをもっと好きにならなきゃ……
それから
すぐには答えられず、俯いた
真帆はそんな二人を横目で見た
はぁ……
しょうがないなぁ……
真帆は立ち上がり
達也のところへ向かった
「達也さ~ん」
「車にお酒を置いてきちゃった」
「一緒に取りに行ってよ」
「え?」
「今からかよ」
「重いのよ」
「飲むのは私たちなんだから」
「手伝って!」
「ああ、分かったよ」
達也は焼いていた肉を皿へ移すと
真帆と一緒に車へ向かった
その途中
真帆が美月へ振り返った
そして
口の動きだけで伝える
『ビビってんじゃねーよ』
『後悔するぞ!』
それを見た美月の表情から
少しだけ強張りが消えた
美月は怜司へ向き直る
「私がいないと……」
「心細いとか?」
「そうだ」
「なによそれ」
「認めるんだ」
「美月がいてくれたら心強い」
「でも……」
「美月に心がないと言われてから」
「俺なりに、ずっと考えてきた」
怜司は目を伏せる
「このプレゼンは」
「俺が出した答えだ」
美月は黙って怜司を見つめた
「もう遅いとは……分かったつもりでいる」
「俺が話しかけるたび」
「美月が達也を気にしていたのも分かっている」
「達也との関係に、水を差すつもりはない」
「会場には達也も来る」
「美月の隣に座ってもらうつもりだ」
「ただ」
「俺が何を考え」
「何を残したいと思ったのか」
「美月にきちんと伝えたい」
「俺の答えを、知っていてほしいんだ……」
「これが、俺の正直な気持ちだ」
怜司は美月へ頭を下げた
「頼む」
美月は何も答えられなかった
頭を下げたままの怜司を見つめる
こんな怜司を見るのは初めてだった
もう……遅い?
胸の奥が苦しくなる
ずるいよ……
怜司君……ずるいよ……
思ってること……
そのまま私に言わないでよ……
美月は胸元の服を握った
でも……
美月は小さく息を吐く
正直な……気持ち
怜司君が……正直に言ってくれてる
だったら……
だったら……私だって……
言わなきゃ……
伝えなくちゃ……
美月はゆっくりと立ち上がった
テーブルに置かれたクーラーボックスを開ける
氷で冷えた缶チューハイを二本取り出した
缶には大きな文字で
超ストロングと書かれている
「怜司君、顔を上げてよ」
怜司が顔を上げる
美月はその頬へ
冷たい缶を押し当てた
怜司が驚いたように目を見開く
「前祝いよ!」
「一緒に飲も!」
怜司は美月から缶を受け取った
「前祝い?」
「美月は酒が弱いんじゃないのか?」
「うん、弱いよ」
「でも飲む」
「私、飲むよ」
「弱いからって」
「逃げたくないもん!」
美月は自分の缶をプシュッと開け
目をぎゅっとつむって
勢いよく一口飲んだ
「んぐっ!」
美月の顔が一気に歪む
「うわっ、きっつ!」
「喉がカーッてする!」
思わず舌を出し
何度か咳き込んだ
それから、怜司をきっと見る
大きく息を吸い込む
「プレゼン!」
「私も見に行くわよ!」
「勝つって言ったわよね!」
美月は勢いのまま怜司の前へ詰め寄り
怜司を睨むように見上げた
「なによさっきから!」
美月は怜司の口調を真似る
『もう遅い』
「とか!」
『水を差すつもりはない』
「とか!」
「オドオドビクビクして!」
「かっこ悪いのよ!」
そこまで言って
美月は唇をきゅっと結ぶ
ほんの一瞬
言葉を飲み込んだ
そんなんじゃ……
私、逃げちゃうよ?
ちゃんと追いかけてよ
勝手に諦めないでよ
美月は精一杯、声を絞り出す
「私に……」
「かっこいいところを見せてよ」
「王子は俺だ……って」
そして迷いを振り払うように叫んだ
「王子は俺だ!」
「って!」
「言ったじゃない!!!」
怜司の雰囲気が
ふっと変わった
「ああ……」
怜司はその言葉を噛みしめるように
もう一度頷く
「ああ!」
美月から渡された缶を開ける
そして一気に飲み干した
それから美月の持つ缶にも目を向ける
「美月、苦手なら俺が飲む」
「え、う、うん」
「ありがとう」
美月は怜司に飲みかけの缶を手渡した
そしてまた怜司は一気に飲み干した
飲み終わると怜司は堂々とした態度で美月に向き合う
その目には強い光が宿っていた
ぞくりとするほど綺麗で
危ういほどに艶を帯びたその眼差しから
美月は目を逸らせなかった
「俺は負けない」
「美月が望むなら」
「誰にも!」
さっきまでバーベキューをしていた二人
今は美月が知らない仕事の顔になっている
なんか……
二人ともかっこいい……
このイベントは、推せるわ
美月は手を合わせて拝む
「ありがたや~ありがたや~」
真帆が小声で美月へ囁く
「ねえ」
「なによ」
「今、目が離せないんだけど」
「やっぱりこの二人」
「BL的な何かがあるんじゃない?」
「ないから!」
「今のやりとりでなんでそうなるのよ!?」
「真帆はBL物ばっかり見過ぎなのよ!」
「美月も人のこと言えなくない?」
「今、なんか拝んでたじゃん」
「うるさいな!」
「せっかくの余韻が薄れるでしょ!」
達也は笑いながら椅子へ座り直した
「ほら」
「肉焦げるぞ」
真帆が慌てて声を上げた
「あーーー!」
「そっちは下味つけてるから」
「そんな焼き方しちゃだめだよ!」
「え?」
「焼くだけじゃねえの?」
「もう!」
「私がやるから貸して!」
真帆が達也からトングを取り上げる
「なんだよ」
「俺だって焼けるって」
「はいはい」
「達也さんは味付けしてない方だけ焼いてよ」
「ちゃんと離して置いといたでしょ?」
「いつの間にこっち持ってきたのよ」
「なんで俺は怒られてんだよ」
真帆は呆れたように息を吐き
達也から取り上げたトングで
網の隅に肉を寄せた
達也も別のトングを取って肉を焼き始める
その横で
怜司だけは立ったままだった
怜司は美月を見る
そして
ゆっくりと美月の前へ歩み寄った
美月は座ったまま怜司を見上げる
「美月」
「な、なに?」
「来週の最終プレゼンに来てくれないか」
「私が?」
「ああ」
「最終プレゼンは一般にも公開される」
怜司はまっすぐ美月を見る
「美月に見届けてほしい」
美月は痛いほど高鳴る胸を押さえた
一瞬
肉を焼いている達也へ目を向ける
私は……
達也さんをもっと好きにならなきゃ……
それから
すぐには答えられず、俯いた
真帆はそんな二人を横目で見た
はぁ……
しょうがないなぁ……
真帆は立ち上がり
達也のところへ向かった
「達也さ~ん」
「車にお酒を置いてきちゃった」
「一緒に取りに行ってよ」
「え?」
「今からかよ」
「重いのよ」
「飲むのは私たちなんだから」
「手伝って!」
「ああ、分かったよ」
達也は焼いていた肉を皿へ移すと
真帆と一緒に車へ向かった
その途中
真帆が美月へ振り返った
そして
口の動きだけで伝える
『ビビってんじゃねーよ』
『後悔するぞ!』
それを見た美月の表情から
少しだけ強張りが消えた
美月は怜司へ向き直る
「私がいないと……」
「心細いとか?」
「そうだ」
「なによそれ」
「認めるんだ」
「美月がいてくれたら心強い」
「でも……」
「美月に心がないと言われてから」
「俺なりに、ずっと考えてきた」
怜司は目を伏せる
「このプレゼンは」
「俺が出した答えだ」
美月は黙って怜司を見つめた
「もう遅いとは……分かったつもりでいる」
「俺が話しかけるたび」
「美月が達也を気にしていたのも分かっている」
「達也との関係に、水を差すつもりはない」
「会場には達也も来る」
「美月の隣に座ってもらうつもりだ」
「ただ」
「俺が何を考え」
「何を残したいと思ったのか」
「美月にきちんと伝えたい」
「俺の答えを、知っていてほしいんだ……」
「これが、俺の正直な気持ちだ」
怜司は美月へ頭を下げた
「頼む」
美月は何も答えられなかった
頭を下げたままの怜司を見つめる
こんな怜司を見るのは初めてだった
もう……遅い?
胸の奥が苦しくなる
ずるいよ……
怜司君……ずるいよ……
思ってること……
そのまま私に言わないでよ……
美月は胸元の服を握った
でも……
美月は小さく息を吐く
正直な……気持ち
怜司君が……正直に言ってくれてる
だったら……
だったら……私だって……
言わなきゃ……
伝えなくちゃ……
美月はゆっくりと立ち上がった
テーブルに置かれたクーラーボックスを開ける
氷で冷えた缶チューハイを二本取り出した
缶には大きな文字で
超ストロングと書かれている
「怜司君、顔を上げてよ」
怜司が顔を上げる
美月はその頬へ
冷たい缶を押し当てた
怜司が驚いたように目を見開く
「前祝いよ!」
「一緒に飲も!」
怜司は美月から缶を受け取った
「前祝い?」
「美月は酒が弱いんじゃないのか?」
「うん、弱いよ」
「でも飲む」
「私、飲むよ」
「弱いからって」
「逃げたくないもん!」
美月は自分の缶をプシュッと開け
目をぎゅっとつむって
勢いよく一口飲んだ
「んぐっ!」
美月の顔が一気に歪む
「うわっ、きっつ!」
「喉がカーッてする!」
思わず舌を出し
何度か咳き込んだ
それから、怜司をきっと見る
大きく息を吸い込む
「プレゼン!」
「私も見に行くわよ!」
「勝つって言ったわよね!」
美月は勢いのまま怜司の前へ詰め寄り
怜司を睨むように見上げた
「なによさっきから!」
美月は怜司の口調を真似る
『もう遅い』
「とか!」
『水を差すつもりはない』
「とか!」
「オドオドビクビクして!」
「かっこ悪いのよ!」
そこまで言って
美月は唇をきゅっと結ぶ
ほんの一瞬
言葉を飲み込んだ
そんなんじゃ……
私、逃げちゃうよ?
ちゃんと追いかけてよ
勝手に諦めないでよ
美月は精一杯、声を絞り出す
「私に……」
「かっこいいところを見せてよ」
「王子は俺だ……って」
そして迷いを振り払うように叫んだ
「王子は俺だ!」
「って!」
「言ったじゃない!!!」
怜司の雰囲気が
ふっと変わった
「ああ……」
怜司はその言葉を噛みしめるように
もう一度頷く
「ああ!」
美月から渡された缶を開ける
そして一気に飲み干した
それから美月の持つ缶にも目を向ける
「美月、苦手なら俺が飲む」
「え、う、うん」
「ありがとう」
美月は怜司に飲みかけの缶を手渡した
そしてまた怜司は一気に飲み干した
飲み終わると怜司は堂々とした態度で美月に向き合う
その目には強い光が宿っていた
ぞくりとするほど綺麗で
危ういほどに艶を帯びたその眼差しから
美月は目を逸らせなかった
「俺は負けない」
「美月が望むなら」
「誰にも!」
