お兄ちゃんが構ってくれない

メラメラと燃える赤い炎が立ち上る、私が家族と作ってきた思い出が眠る家。
「翠...っ。 あなただけでも…。逃げるのよ。」
「やだ...!やだやだやだ! お姉ちゃんといるもん!」
「翠っ! ごめんね。私、お母さんとお父さんを見捨てられない」
「だったらわたしも! お姉ちゃんと一緒にいるぅ!!」
「翠。 あなたが、お父さんとお母さん、私の分まで生きるのよ...。」

二宮 翠。5歳で両親、そして大好きなお姉ちゃんを、火事で亡くしました。

そして、それから7年後。
児童養護施設にいた私は、ついに里親に引き取られることに!
その里親には、私と同じ年齢の息子がいるということで...
お兄ちゃんができました!
ですが...。

「こんなのも1人で開けられないのかよ。相当姉が居ないとだめだったんだな」

私、新しくでしたお兄ちゃんと、仲良くできるのでしょうか?(汗


「翠ちゃんに、里親さんが迎えに来てくれることになったよ」
突然、児童養護施設のスタッフさんの上田さんに言われ、私の足がビタリと止まる。
「さ、里親さん...?!」
「うん。そうだよ」
私の名前は、二宮 翠(にのみや すい)。
火事で両親と姉をなくし、7年前から児童養護施設にいるんだ。
でも、ここにいながら普通に中学校にも通ってるし、学校にもここにも友達がたくさんいるから、全然辛くなんかない!
...だけど。
私を庇って、大好きだったお姉ちゃんも、天国に行ってしまったんだ。
お父さんとお母さんを助けに行くために、1人で赤く染った家に入っていった姉。
『あなたが、お父さんとお母さん、私の分まで生きるのよ...。』
あの時、姉があの言い方をしたということは。
姉はもう自分が戻ってこないとわかった上で、私にあの言葉を残していったのだ。
でもそのおかげでね。
お父さんとお母さんとお姉ちゃんの分まで、生きるのを貫こうと決めれたんだ。
「翠姉、行っちゃうの...?」
すると、近くにいた、小学生6年生、つまり私の一個下の女の子、陽葵(ひまり)ちゃんが言ってきた。
私の昔からのお友達なんだ。
「うん...でも、私、いつでも遊びに行くから! しかも、あと1年すれば、一緒に中学校通えるでしょう?」
「...たしかにそうだね!!」
私がそういうと、さっきまで不安気だった彼女が、二パーっと笑った。
そうすると、陽葵ちゃんは、走って施設の庭に飛び出して、ほかの友達と遊んでいる。
私と上田さんは、陽葵ちゃんが庭で同じ施設の友達と、楽しく遊んでるのを暖かい目で見つめた。
そして私は上田さんにまた目を合わせ、
「相手は...?どんな人なんですか?」
私は恐る恐る聞いた。
「うぅ〜んとね。 とっても優しそうな人だったよ。 引き取ってくれる方は、シングルファーザーの人なんだよ。」
「シ、シングルファーザー??」
優しいんだ...。ていうのを置いといて、シングルファーザーってことにびっくりする。
普通こういうのって、私のお母さんとシングルファーザーの人が繋がる...んじゃないの?!
私のために、私だけを引き取ってくれるんだ。
ん、待てよ...?
「シングルファーザーってことは、息子さんがいらっしゃるんですか...??」
「そのとおり!」
上田さんは私に親指と人差し指をたて、笑った。
「しかもね、その息子さんが...」
あまりにも上田さんがニヤニヤしてるもんだから、怖くて顔が引きつる。
そして、驚くことを言ったんだ。

「翠ちゃんと、同年代みたいなの!」

二宮 翠、お姉ちゃん...ではなく、同年代の、お兄ちゃんが出来るみたいです。


それから数日後、私は無事、シングルファーザーの家に引き取られ、名前も『杠葉 翠(ゆずりは すい)』になった。
でも、そこにいるお兄ちゃんは、もともと私と違う学校に通っていたらしく、私の通う学校に転校してくれることになったらしいんだ。(ほんとうに優しいよね!!)
別に、妹・兄で別の学校に通っててもいいと思ったんだけど...。
お父さん(シングルファーザー)の指示でこうなったんだ。
お兄ちゃんの方から私の学校に転校すると言ってくれたんだよ!
でもね、私まだお兄ちゃんがどんな人か分かってないんだ。
実はまだ一回も会ってなくて、今日は初めて会えるという日!

「翠ちゃんはここ使って」
お父さんに部屋を案内される。
今日は日曜日、学校もなくて、引越し日和だ!(?)
「わかった!ありがとう、お父さん!」
「うん。自由に使ってくれ。 それと...」
お父さんが何か言いそうだったから、慌てて視線を合わせるために後ろに振り返る。
「兄の事なんだけどね...。 ちょっと昔の出来事で...。女の子が嫌いになっちゃって...」
えっ。
「あまりストレスにならない具合に、関わって仲良くしてくれると嬉しいな。」
そう、なんだ...。
「...うん!わかった!」
「ありがとう。じゃあね」
そう言って、お父さんは部屋を出て階段をおりていく。
びっくりだった。初めて知ったから。
(昔のトラウマで女の子が苦手...??)
何があったんだろう。
聞きたいことは山々だけど、私は女の子だ。
(あんまり、お兄ちゃんとは関われないのかな...)
そう思いながら、喉が乾いたので、1階のキッチンにある冷凍庫の中のペットボトルを、取りに行こうと決めた。
(なんとこの家は二階建て! 私の昔の家族の家は、マンションだったから、ココ、すんごく広く感じる!!)


1階のキッチン。
私は無事、冷蔵庫にあるペットボトルを取れたんだけど...。
(あれ...開かない。)
力ずくでペットボトルをこじ開けようとしても全く開かない?!
ど、どうしよ...。
お父さんは仕事でもう外言っちゃったし...。
(お父さんは、いつも夜遅くに帰ってくるんだって。)
その時、ピンッと閃いた。

お兄ちゃんに開けてもらおう!

私はそう閃き、お兄ちゃんの部屋に光の速さで(?)向かう。
...お兄ちゃんの部屋に着いた。中からは何にも聞こえてこない。
(いる、よね??)
居なかったらちょう恥ずかしい人になるけど...。
まずは自己紹介だッ!!
「初めまして!えと...杠葉 翠です! この度、この杠葉家の娘・妹になりました! よろしくお願いします!」
シン―――。
ありゃありゃ。いなかったか?
でも、可能性を信じて。
「ちょっと困り事があって...開けてくれませんかっ?!」
シンっ―――。
うん、いないかも。
そうでなきゃこんな無視しないでしょ。
はぁ...と、とぼとぼペットボトルボトルを冷蔵庫に返すためにキッチンに向かおうとしたら...。
ガチャっ―――。
あっ、開いた?!
バッと後ろを振り返る。
そこには―――。
「何? 何が困ってんの」
「―――!」
そこには...スラッと高い背。
黒いダボダボTシャツにストレートズボン。
黒髪センター分けの男子―――、違う。

杠葉 累(ゆずりは るい)、お兄ちゃんの姿だ。

びっくり。
お兄ちゃん、めちゃくちゃイケメンで声がすんごく良い。
この人が私のお兄ちゃんなんだ...っ!
(なんか自慢できること増えたなっ☆)
「あっ、え、えと―――」
私は恐る恐るペットボトルを彼の前に差し出す。
「開かなくて...開けてくれない?」
「...マジで言ってる?」
…………………………え?
「こんなのも1人で開けられないのかよ。相当姉が居ないとだめだったんだな」
えっえっえぇえええ!??
思わずその発言にびっくり。
なんか、だいぶ顔と性格が違うんですけど!?
バタンッ
「ちょっ、ちょいと!!」
部屋のドアを締められる。
「それぐらい自分の力で開けろ。 中学生だろ」
ドアの奥からそういう声が。
(あ、開けられないから頼んだのに〜!)
ちょっとこのお兄ちゃん、わたし、苦手かもです...。