眠れない夜のひまつぶし【SS】

お題【時計】

チクタクチクタク、オーバーオールを着た男の子が膝を抱えて時計を見上げてる。くるっぽーくるっぽーと時間になると時計からハトが飛び出してくる。あまりにも規則正しいハトだから、時計の中がどうなってるのか見たくなって、男の子は時計を覗き込んでみる。片目をつぶって10の丸を覗き込んでみると、ハトが羽を広げてソファーにぐでっとうつ伏せで寝ている。「ハトさんいつもお疲れ様です!」と見習いのハトに羽を揉ませる始末。くるしゅうないとまるで殿様みたいな振る舞いのハトに男の子があんぐり口を開けていると、午後3時がせまる。「ハトさん出番です!」と大物俳優のスタジオ入りを思わせる声かけをされたハトは、うむと羽を正してスタンバイする。3、2、1とカウントされたハトが飛び出そうとするものの、出られない!なぜなら男の子がハトがいつも飛び出してくる戸を指で押さえていたからだ。10の小窓から覗き込む男の子の目玉を見つけたハトは、「きっさまー!」と顔を真っ赤にしながら、戸に体当たりしたり押したりして、どうにか午後3時を知らせようとする。けれど、48、49、50と刻一刻と時間が過ぎてゆき、3時1分が迫ってる!ぐぬぬぁー!とハトが渾身の力で戸を押し開けようとしたとき、「こら、なにしてるの!」男の子は母親の声にびくっと押さえていた時計の戸から指を離す。母親に怒られる男の子を横目に、襟を正しドヤ顔をしたハトは満を辞して午後3時を告げる。くるっぽーくるっぽー。男の子と同時に、見習いバトがチッと舌打ちする。ハトがギョッとして見習いを見るものの、見習いバトは素知らぬ顔。母親は男の子を叱ったあと、男の子の手が届かない高い場所に時計をかけかえてしまう。こうして今日もハトは規則正しく時間を知らせ続ける。