眠れない夜のひまつぶし【SS】

お題【自動販売機】

真夜中に自動販売機を見つけた男の子が走ってやってくる。手のひらにはぎゅっとにぎりしめた小銭のあとがついてる。こめかみから汗を流した男の子は、ごくりと喉を鳴らして慎重に120円をちゃりんちゃんりんちゃりんと自動販売機に投入していく。深夜2時22分。自販機のボタンがピコピコピコッとミラーボールのように点滅しはじめて、空からUFOがやってくる。寒空の下、男の子の口から白い吐息が漏れて、きらきらした目でUFOを見上げる。宇宙船から銀のスロープが伸びてきて、自販機の前に銀色の宇宙人が降りてくる。ピコピコッと意味不明の言葉を発した宇宙人は、赤いリボンでラッピングしたコーラの瓶を贈呈してくれる。わーっ!と茂みに隠れていた記者たちが男の子と宇宙人を取り囲んで、たくさんのカメラを向けられまぶしいくらいフラッシュがたかれる。ピコピコピッ!と言った宇宙人はスロープに乗ってUFOに帰って行ってUFOが遠い夜空に飛び立つ。UFOを見送ってほわーっと白い息を吐き出した男の子は、自分の手にあるコーラをふと見て飲みたかったやつじゃないなとつぶやく。それを聞いて我先にと自販機に小銭を投入した記者たちが、リボン付きのコーラとの交換を迫ってくる。男の子はおじさんが手にしたメロンソーダに目を止めるけど、さっき会ったばかりの宇宙人と先ほどの興奮を思い出して、記者たちにピコピコピッ!と告げて走り去る。