眠れない夜のひまつぶし【SS】

お題【窓】

木枠で4つに区切られた窓の一角に丸を書いてみる。隣にはバツ、斜め下にもバツを書いて、そのとなりにもバツを書いてみる。天使はむむっとうなって窓を見つめてから、窓越しに丸の中におさまった男の子をロックオンした。黒髪のさらさらの髪の男の子。味方からのボールを器用にトラップして、サッカーゴールまで運んでいく。そのボールさばきにおおーっと拍手を送りながら、続いて天使はとなりの窓にバツバツ丸バーツ!と流れるような手捌きで書く。丸の中におさまっていたのは、意外や意外!なんと彼とは犬猿の仲の委員長ちゃんじゃないか!天使はむむーっ!とさらにうなったものの、これもお勤め!とキューピッドの矢を取り出して二人を射抜く。無事にハートにヒットして一安心と思いきや、委員長ちゃんは抱えている本に、黒髪の男の子は目の前のサッカーボールに恋してしまった!ええーっ!と天使があわてて説明書をめくると、ハートの矢に射抜かれた人間は、最初に見たものを好きになるらしい。へぇ、って感心してる場合じゃなくて!天使はあわててハートの矢の効果を打ち消す黒いハートの矢で二人を射抜く。百発百中だぜ!と天使がドヤ顔していると、委員長ちゃんはこんなものみたくない!と本を投げ捨て、黒髪の男の子はサッカーなんてこりごりだ!とボールを投げ捨てて校舎に戻ってくる。あばばばっ!と天使が真っ青になってハートの矢を取り出そうとすると、ごほん!と背後で咳払いが聞こえる。恐る恐る振り返ると、「試験は失敗です!」キューピット採用試験の試験官に告げられる。「そんなぁ〜!」と肩を落とす天使はその後も就活がうまくいかずにとほほな毎日を送っていたものの、ある日、試験官から電話がかかってきて「君はすばらしい!合格だ!」と大絶賛される。何が何やらわからないままキューピット社の入社式で紹介されたのは、天使がくっつけ損ねたはずの二人。本が嫌いになった委員長は運動が好きな活発な性格に、サッカーが嫌いになった男の子は勉強が好きな優等生になって、犬猿の仲だった二人は真逆の性格になったことで惹かれ合い恋人として付き合っていたのだ。「新しいアイデアに拍手!」と褒められた天使だったが、入社式を飛び出して二人のところに行くと、ハートの矢で射抜いて二人を元の性格に戻す。ぜえはあと息をつきながら、これでまた就活の日々が始まる、でもこれでよかったんだと涙を浮かべる天使の目の前で、元の性格に戻った二人はケンカを始めるものの、口喧嘩の中で実は照れて素直になれなかっただけで両思いだったと気がつく。鼻水をたらしながら泣いていた天使は、ほへ?と、手を繋ぎながら夕日に向かって歩いていく二人を大号泣しながら見送る。