眠れない夜のひまつぶし【SS】

お題【階段】

トトトトッと階段を降りる軽い足音が聞こえる。放課後、図書室の本を抱き抱えて歩いていたメガネの女の子は、ハッとして足を止める。手すりのそばに立って階段の上と下を覗き込んでみるけど、誰もいない。ふふふっと女の子の笑い声。メガネの女の子はバラバラっと本を落としてきゃーっ!と悲鳴をあげて逃げていく。その様子をかくれて見ていた男の子がくくっと笑いながら出てくる。手にはスマホがあり画面には録音アプリが表示されている。男の子が再生ボタンをタップすると、ふふふっと女の子の笑い声が流れ出す。男の子は、校内のビビリワンコンテストの写真部門でグランプリを目指していた。男の子がデジタルカメラをかまえて次のターゲットを待っていると、軽い足音が聞こえてくる。男の子がハッとして、「だれだよ?」と怒鳴るものの、足音の数が増えていき、あははははっ!と女の子の笑い声が聞こえてくる。男の子がひっと顔をひきつらせていると、スマホの録音アプリが勝手に作動して録音が再生される。ジー……という機械音のあと、『それ、わたしの話だよね?』悲鳴をあげた男の子は、一目散にぎゃーっ!と階段を駆け降りていく。落とした拍子にカシャッとシャッターが切られたカメラは、泣き叫びながら遠ざかっていく男の子をとらえていた。「もう、なんなのよ……」びびりながら本を回収にきたメガネの女の子は、踊り場に落ちたスマホから流れる「ふふふ」という女の子の笑い声とカメラのメモリー機能に残る自分の写真ですべては同じクラスの男子のしわざだと察する。怒りで肩を震わせていたメガネの女の子は、そうだ、とカメラに残る男の子の写真を見てるんるんとスキップで写真を印刷しに行くことを決める。誰もいなくなった階段では、半透明の女の子がふふふふふと笑っていた。