今日も悪魔に恋してる 〜塩対応な先輩は、絶対に好きと囁かない~

結局、タバコから戻った佐久間主任は、他部署の男性たちの席で飲んでいて、話すことはなかった。
解散するときにすれ違っただけ。
それでもまた、シトラスとタバコの匂いが、じわりと記憶に染み込んだ。  

「小鳥遊さん、先に秘書課と情シス部に届けて」

届いた備品を、注文した部署ごとに振り分けていた。
山根さんの指示のもと、台車にのせて秘書課に向かう。
 
「ありがと!すみれ」
「おつかれさま、確認よろしく」
「はーい」

手早く済ませた麻美が、受け取りの押印をする。

「まだ荷物あるのね、次は?」
「情シスだよ」
「例のっ!」
    
麻美が周りを確認したあと、コソッと耳打ちする。
 
「悪魔に泣かされないようにねっ」
「え?」
「だって新歓の対応、すみれも見たでしょ」

女性陣への対応を思い出す。
同時に、ストールのことも。

「大丈夫。……たぶん、違う気がするから」

怪訝な顔の麻美に手を振り、情シス部へ急いだ。
エレベーターに乗り、階下ボタンを押す。
乗り合わせていた男性社員が、声をかけてきた。

「お疲れさまです、もしかしてその荷物はうち——情シスですか?」
「はい、今から届けに行くところです」
「じゃあ、サーバールームにいる佐久間主任に届けてもらっていいですか?」 
「サーバールーム?」
「主任が、その備品を使う準備をしてる最中なんですよ」 
「わかりました」
 
(ん……?佐久間主任に直接?)

ポーンという到着音と「よろしく」の声に背中を押され、エレベーターを降りる。
情シスとは別の部屋にあるサーバールーム。
立ち入ることのない場所に、少しだけ緊張しながら、扉をノックした。

「返事がない……」