今日も悪魔に恋してる 〜塩対応な先輩は、絶対に好きと囁かない~

昨日と同じように、しっかりした足取りで帰ってきた。
でも、玄関の扉を閉めた途端、昨日とは違う堪えていたものが溢れる。

「えっ……?えっ?……夢じゃないよね?」

そのままソファに倒れ込む。
眼鏡を外してクッションに顔を埋めたものの、それでも信じられなくて頬をつねってみた。

「痛い……やっぱり現実?!」

両頬をさすりながら、さっきの出来事を噛み締める。 

(期間限定だけど……付き合ったんだよね)
(佐久間主任と……)
 
ふと、そこで重大なことに気付いた。
 
(……あれ?)
(主任の下の名前……なんだっけ?)

——さくま……さくま……。
 
(彼氏なのに、名前知らないってどうなの?!……明日確認しなきゃ)

自分でツッコミながらも、昨日とは違って口元が緩む。
ふと、まだポケットに入れたままのチョコを思い出した。
もう一度確かめるまで食べないと決めていた。
そしてあたしは、ちゃんと自分で確かめに行った。
 
(……もう、食べてもいいよね) 
 
ポケットからチョコを取り出し、キャンディ包みをほどく。
口に入れると、ミルクチョコレートがゆっくり舌の上で溶けていった。

(甘い……) 
 
触れた唇の感触が、不意に重なった。
佐久間主任との初めてのキスも、こんなふうに甘かった。