ビアガーデンの酔いも覚め、しっかりした足取りで帰ってきた。
でも、玄関の扉を閉めた途端、堪えていたものが溢れる。
「……っ、ぅ……」
『無理や』
あの時とは違う三文字が、何度も頭の中で繰り返される。
好きだと気づいたその日に、フラれた。
「……そりゃ、泣く……よね」
眼鏡を外して、手の甲で涙を拭う。
そのまま着替えようとポケットに手を入れたとき、指先に何かが触れた。
「……あ」
キャンディ包みのチョコレート。
今日、佐久間主任があたしの頭に乗せたものだ。
(もう……食べちゃお……)
包みをほどく指が、躊躇っているのかゆっくりになる。
ミルクチョコレートの甘い香りに、昼間の光景が蘇った。
『いらんなら返せ』
ガラス越しにそう言った、あの人の口元まで。
『そこ寒いから、端に行っとけ』
『足元、コードあるから気ぃ付けや』
『無理や』
優しくないと思った。
何度も、そう思った。
でも、本当にあたしを突き放したい人が——
あんなふうにチョコをくれるんだろうか。
(……何かちがう)
はっきりとは分からなくても、もう一度確かめたい。
チョコを食べるのも、本当に泣くのもそれからだ。
「佐久間主任……」
チョコをもう一度包み直し、そっとカバンに戻した。
でも、玄関の扉を閉めた途端、堪えていたものが溢れる。
「……っ、ぅ……」
『無理や』
あの時とは違う三文字が、何度も頭の中で繰り返される。
好きだと気づいたその日に、フラれた。
「……そりゃ、泣く……よね」
眼鏡を外して、手の甲で涙を拭う。
そのまま着替えようとポケットに手を入れたとき、指先に何かが触れた。
「……あ」
キャンディ包みのチョコレート。
今日、佐久間主任があたしの頭に乗せたものだ。
(もう……食べちゃお……)
包みをほどく指が、躊躇っているのかゆっくりになる。
ミルクチョコレートの甘い香りに、昼間の光景が蘇った。
『いらんなら返せ』
ガラス越しにそう言った、あの人の口元まで。
『そこ寒いから、端に行っとけ』
『足元、コードあるから気ぃ付けや』
『無理や』
優しくないと思った。
何度も、そう思った。
でも、本当にあたしを突き放したい人が——
あんなふうにチョコをくれるんだろうか。
(……何かちがう)
はっきりとは分からなくても、もう一度確かめたい。
チョコを食べるのも、本当に泣くのもそれからだ。
「佐久間主任……」
チョコをもう一度包み直し、そっとカバンに戻した。



