天使とケサランパサランの靴屋

 温かく、キラキラと輝くオレンジ色の空間。

 その美しさに、天使自身がまるで幸福な夢を見ているかのように、胸を躍らせました。

 それからというもの、そばかすの天使は、夜な夜なこの二人を窓辺から見つめることが、何よりの楽しみになっていたのです。

 ――そんな、ある穏やかな夜のことでした。

 街に降り立った天使の元へ、今まで感じたことのないほど冷たく悲しい風が吹き抜けます。

 この美しい街に、ついに戦争という名の化け物が姿を現したのです。

 闇を切り裂く激しい銃声。あちこちから湧き上がる、人々の悲痛な叫び声。

 優しかった街並みが激しい炎に包まれる中、逃げ惑う人々の群れに押し流されるようにして、彼女も必死にその場を離れようとしました。

 しかし、逃げ惑う人々の目から、心から、天使の胸へと飛び込んでくる感情は、彼女が今まで配ってきたものとは真逆のものでした。

 底の知れない悲しみ。胸をえぐるような苦しみ。そして、これまで感じたことのないほど、燃え盛る激しい憎しみ――。

 人間の放つ漆黒の感情に押しつぶされ、そばかすの天使は耐えかねて絶望の叫びをあげました。
 
 その瞬間、彼女の身体は、耳を遠のくような争いの爆風に無情にも飲み込まれてしまったのです。

 やがて夜が明け、静けさの中で目を覚ました天使は、背中に鋭い痛みを感じました。

 痛みの走る方へそっと視線を向けると、あれほど美しかった真っ白な翼の片方が、無惨にも赤く染まっていました。