天使とケサランパサランの靴屋

「ワシの足じゃ、お前たちと逃げるには足手まといだよ」

「何を言っているの! だから今すぐにでも、ここを離れればいいじゃない」

 老人はその場にしゃがみ込み、幼いサーシャと目線を合わせながら、娘に静かに言いました。

「お前の母さんと過ごしたこの工房じゃ。このままここに居させてくれ」

 ナターシャはその言葉を聞いた瞬間、カゴから荷物を取り出していた手をピタリと止めました。

 彼女はきつく唇を噛み締め、涙を堪えるようにして、キッと目を強張らせて父親を睨みつけます。

「お母さんとお父さんが、ここを命がけで守ってきたことだって、ちゃんと知っているわよ……! だけど、私はお父さんに死んでほしくないの!」

 胸を締め付けるようなナターシャの叫び。

 二人が激しく言葉を交わすその最中、サーシャの小さな瞳は、おじいさんの背後に立つ「大きな翼を持った少女」を捉えていました。

 翼を持つ少女が微笑み、手を振りましたが、サーシャは警戒するように顔をお爺さんの胸に埋めました。

 老人はそんなサーシャにおどけるように語りかけます。