天使とケサランパサランの靴屋

 ケサランパサラン。ケサランパサラン。

 どこからか、幸せがやってくる。

 幸せは、フワッと風に乗り、誰のもとにも訪れます。

 『幸せは幸せが好き。』

 だから彼女らは、笑顔の人のところへ集まるのです。


 薄暗い曇り空の下、小さな工房に「トントントン」と心地よい音が響きます。

 お爺さんが奏でるトンカチのリズム。

 窓の外から風が覗き込むと、油で汚れたお爺さんの服や指先を静かに撫でていきます。

 その傍らには、真っ白な服を着たそばかすの少女が、小さな椅子に腰掛けていました。

 背中には大きな翼。彼女はお爺さんの鳴らすトンカチの音に合わせて、楽しそうに首を振っています。

(ケサランパサラン。ケサランパサラン……)

 ――外では、戦争という名の大きな化け物が、もうすぐそこまでやってきているというのに。