瞳の奥で

 小学4年生の悠月。家の事情で引っ越し、新年度が始まると同時に転校した。姉は中学1年生、弟は小学1年生。"転校"を経験したのは、兄弟の中で私1人だけだった。

 人見知りで初対面の人とは全く喋れなくなってしまう私は、転校してしばらくクラスの人とちゃんと話すことができなかった。幸いそんな私を気にかけてくれる人は数名いて、そのままその人たちと一緒に休み時間や放課後を過ごすようになった。

 しかし、話すことが本気で苦手だった私は、友達といえるような人とも自分からは全く話すことができずにいた。とうとう私は、そんな人見知りをした状態のまま、"すごく静かで頭の良い転校生"というイメージがクラス全体に広まってしまい、小学校の間は常に自分を押し殺して友達と接していた。



 転校して1年が経ち、さすがに学校には慣れていたものの、静かであるというイメージはずっと残っていて、それを自分でも感じながら友達に声をかけるというのは、どんな内容を話すにしても勇気がいった。

「……凛音(りんね)ちゃん、一緒に遊ぼ?」

 そのときでは1番仲が良かったと言える凛音ちゃんに、少しの勇気を出して放課後に遊ぼうと誘った日。ちょうど私たち2人の隣に立っていたのは、面倒見は良いが考えの押し付けが強い玲奈ちゃんだった。

「うん!悠月ちゃん、いい…………」

「ええぇーっ!羽野さんが遊びに誘ってる!!」

 たったこれだけの言葉を私はそのまま受け止め、勝手に恥ずかしいという感情に頭が支配された。"静かで頭の良い転校生"というイメージを壊してはいけない、ということが、無意識であるが1番に浮かんだようで私は何も言えなくなってしまった。

 ただ1つそのときの救いとなったのは、そんな玲奈の発言の後でも普通に放課後に遊んでくれた凛音ちゃんだった。未だにクラスメイトとの距離が遠く、あまり人と話すことのない悠月に対しても、自然に友達として交流を続けてくれていた。

 クラスメイトも決して、冷たかったとか避けられたといったことはなく、むしろ男子に関しては安易に触れられずに敬遠されているといった印象を受けた。玲奈ちゃんや他の女子も、分からないことは教えてくれたりいろいろと手伝ってくれたりもした。

 それでも素を出せない状況は厳しく、小学校卒業までの3年間、私はすっかり自分の気持ちをふさぎ込んでしまっていた。

 そしてそれは途中で変えられる訳もなく、"そういう"性格として自分を押し込む習慣が、いつの間にかついてしまったのであった……。