私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

剣がぶつかる音が、炎に包まれた街に響き渡った。

ルーファンスは、リリアを守るように抱えながら戦っていた。

けれど――。

すでに身体は限界だった。

それでも、剣を手放さなかった。

「……誰にも渡さない」

何度も、その言葉を繰り返す。

兵士たちが迫る。

剣が振り下ろされる。

ルーファンスはそれを受け止める。

けれど、別の刃が身体を掠めた。

膝をつく。

それでも、リリアを抱く腕だけは離さなかった。

「殿下! もうおやめください!」

誰かの声が聞こえる。

けれど、ルーファンスにはもう届かなかった。

腕の中にいるリリアだけを見つめていた。

「……リリア」

返事はない。

「ごめんな……」

涙が、頬を伝う。

「もっと……一緒にいたかった」

二人で食事をした。

くだらない話をして笑った。

隣で眠った。

そんな何気ない毎日が、ルーファンスには何よりも幸せだった。

「たった三週間だったな……」

声が震える。

「でも……俺は幸せだった」

ルーファンスは、リリアの手を握った。

冷たくなった指を、自分の手で包み込む。

「君と出会えて……よかった」

周囲では、まだ戦いが続いていた。

けれど、ルーファンスにはもう何も見えなかった。

ただ、リリアだけを見つめていた。

「……もし、もう一度だけ……」

言葉が途切れる。

そして、最後の力を振り絞るように呟いた。

「何度生まれ変わっても……君と出会いたい」

その瞬間――。

空を覆っていた黒い雲の隙間から、一筋の光が差し込んだ。

まるで、二人の願いを聞き届けるかのように。

ルーファンスは、リリアを抱きしめる。

「次の世でも……絶対に見つける」

その声は、もうほとんど聞こえなかった。

そして――。

二人の身体から、静かに力が抜けていった。

炎に包まれた街の中で。

二人は最後まで、互いの手を離さなかった。

やがて二人の魂は、静かに空へと昇っていく。

だか、二人の強すぎる願いを、天は見過ごさなかった。

あまりにも短かった二人の幸せ。

あまりにも深かった二人の愛。

そして――。

何度生まれ変わっても、互いを求め続けようとする二人の願い。

天は二人に、もう一度だけ。

運命をやり直す機会を与えた。

そして二人は――。

次の世へと、生まれ変わっていった。