私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

ルーファンスは、迫りくる兵士たちを必死に退けていた。

けれど――。

もう、身体は限界に近かった。

肩から流れる血が、服を赤く染めている。

それでも、リリアの前から退こうとはしなかった。

「ルーファンス……!」

リリアが震える声で名前を呼ぶ。

「大丈夫だ」

振り返ることなく、ルーファンスが答える。

「俺の後ろにいろ」

その瞬間だった。

一人の兵士が、ルーファンスの背後へ回り込んだ。

剣が高く振り上げられる。

ルーファンスは気づいていない。

「危ない!」

リリアが叫んだ。

次の瞬間――。

リリアが、ルーファンスの背中へ飛び込んだ。

「……っ!」

鋭い刃が、リリアの身体を貫いた。

「……え?」

ルーファンスの動きが止まった。

目の前で、リリアの身体から力が抜けていく。

「リリア……?」

ルーファンスは慌てて彼女を抱き止めた。

剣が地面に落ちる。

「おい……」

腕の中のリリアは、苦しそうに息をしていた。

それでも、ルーファンスを見て小さく笑った。

「……守れて、よかった」

「何言ってるんだ……」

ルーファンスの声が震える。

「こんなの……違うだろ」

リリアは、ゆっくりと首を横に振った。

「だって……あなたが傷つくのは……嫌だったから」

「俺なんかどうでもいい!」

ルーファンスはリリアを強く抱きしめた。

「君が生きていれば、それでいいんだ!」

リリアは小さく息を吐いた。

「……短い間だったけど……」

震える手を、ルーファンスへ伸ばす。

「夫婦になれて……幸せだったよ」

「やめろ……」

ルーファンスは、その手を握った。

「そんなこと言うな」

「まだ……」

涙がリリアの頬を伝う。

「まだ、これからだろ……」

リリアは、最後の力を振り絞るように手を伸ばした。

ルーファンスの頬へ触れようとする。

「……あなたと……」

けれど――。

指先は、届かなかった。

リリアの手が、静かに落ちる。

「……リリア?」

返事はない。

「リリア……?」

ルーファンスは、何度も名前を呼んだ。

けれど――。

もう、彼女の声が返ってくることはなかった。