私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

「……囲まれた」

ルーファンスが、低く呟いた。

前方には兵士。

後方にも兵士。

左右の路地からも、次々と人影が現れる。

完全に逃げ道を塞がれていた。

リリアが、ルーファンスの袖を掴む。

「……どうするの?」

ルーファンスは答えなかった。

ただ、腰に差していた剣へ手を伸ばす。

そして、静かに鞘から抜いた。

「俺の後ろにいて」

「でも……」

「絶対に離れるな」

その声は、いつになく強かった。

リリアは、ルーファンスの背中を見つめる。

目の前にいるのは、圧倒的な数の兵士たち。

それでも、ルーファンスは一歩も退かなかった。

「抵抗するな!」

兵士の一人が叫ぶ。

「両国の命により、お二人を拘束する!」

ルーファンスは剣を構えたまま、リリアを振り返った。

「……怖いか?」

リリアは少しだけ震えながら、首を横に振った。

「あなたがいるから」

ルーファンスの目が、わずかに揺れた。

「……そうか」

そして、前を向く。

「なら、俺を信じろ」

「うん」

次の瞬間――。

兵士たちが一斉に駆け出した。

ルーファンスも踏み込む。

剣と剣がぶつかり、激しい音が響いた。

一人を退ける。

しかし、すぐに別の兵士が迫ってくる。

ルーファンスは必死に剣を振るった。

一歩もリリアの前から退かない。

肩を斬られても。

腕を掠められても。

それでも、リリアの前に立ち続ける。

「ルーファンス!」

「来るな!」

ルーファンスは叫んだ。

「俺の後ろから出るな!」

リリアは唇を噛みしめる。

目の前で、愛する人が傷ついていく。

それでも、ルーファンスは戦い続けた。

一人。

また一人。

それでも兵士の数は減らない。

むしろ、さらに増えていく。

息が上がる。

剣を握る手にも力が入りにくくなる。

それでも――。

ルーファンスは倒れなかった。

「……リリアには、絶対に触れさせない」

その言葉だけを胸に、最後まで剣を振るった。

けれど――。

あまりにも、数が多すぎた。