私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

玄都国の街は、炎に包まれていた。

遠くから爆発音が響き、建物が次々と崩れていく。

逃げ惑う人々の声が、あちこちから聞こえていた。

その中を、二人の男女が必死に走っていた。

ルーファンスはリリアの手を強く握っている。

「こっちだ!」

「待って……!」

リリアの足がもつれた。

身体が大きく傾く。

「リリア!」

ルーファンスはすぐに振り返り、彼女の身体を支えた。

「大丈夫か?」

「……うん」

リリアは息を切らしながら、小さく頷いた。

けれど、その顔には不安が浮かんでいる。

「ルーファンス……」

「何だ?」

「……私たちのせいなのかな」

ルーファンスの足が止まった。

リリアは、燃え上がる街を振り返る。

自分たちが玄都国に逃げてきた。

そのせいで、この国まで戦火に巻き込まれてしまった。

「私たちが一緒にいなければ……」

「違う」

ルーファンスは、強く言った。

リリアが顔を上げる。

「君のせいじゃない」

「でも……」

「俺たちを利用して、戦争を起こそうとしている奴らがいる」

ルーファンスは、握っていた手にさらに力を込めた。

「だから、君が自分を責める必要はない」

リリアは何も言えなかった。

ルーファンスは彼女を見つめる。

「……俺がいる」

その一言に、リリアの目に涙が浮かんだ。

「うん……」

リリアは小さく頷いた。

「あなたがいるなら……大丈夫」

「行こう」

二人は再び走り出した。

けれど――。

曲がり角を抜けた先で、ルーファンスが突然足を止めた。

「……っ」

目の前に、兵士たちがいた。

マ国の兵士。

リュミエラ国の兵士。

そして、玄都国の兵士までいる。

三つの国の兵士たちが、道を塞いでいた。

後ろからも、別の兵士たちが迫ってくる。

ルーファンスは、ゆっくりとリリアの手を握り直した。

逃げ道は――。

もう、なかった。