私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

二人が玄都国にいると知れ渡ったことで、マ国とリュミエラ国の緊張は一気に高まった。

両国では、互いに責任を問う声が上がり始めていた。

「皇子殿下を連れ去ったのは、リュミエラ国ではないのか!」

「皇女殿下を奪ったのは、マ国ではないのか!」

そんな根拠のない噂まで広がっていく。

両国の皇帝は、すぐに兵を動かすことを望んでいたわけではなかった。

それでも、一度高まった怒りと疑念を抑えることは難しかった。

そんな中――。

マ国で、事件が起きた。

和平を強く主張していた宰相が、何者かによって殺された。

「宰相閣下が……?」

皇宮に衝撃が走った。

宰相は、両国の争いを止めようとしていた人物だった。

その人物が消えたことで、マ国内では戦争を求める声がさらに大きくなった。

そして、リュミエラ国でも――。

和平派の重臣が殺害された。

両国の和平を望む者が、相次いで命を奪われていく。

偶然とは思えなかった。

けれど、誰が何のために二人を利用しているのか。

その時点では、まだ誰にも分からなかった。

玄都国の皇帝は、二つの事件の報告を聞いて眉をひそめた。

二人が逃げたことだけなら、ここまで事態が急速に悪化するはずがない。

和平派の中心人物が、ほぼ同時に消されている。

「……誰かが、この二人を利用している」

皇帝は静かに呟いた。

ルーファンスとリリアを戦争の原因に仕立て上げれば、マ国とリュミエラ国を戦わせることができる。

そのために、和平を望む者たちを先に排除しているのではないか。

そう考えれば、すべてが繋がる。

「二人を戦争の元凶にしたい者がいる……」

けれど――。

気づくのが遅すぎた。

すでに両国では、兵が動き始めていた。

怒りも憎しみも、止められないところまで膨れ上がっていた。