私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

二人が玄都国で暮らし始めて、三週間ほどが過ぎようとしていた。

朝になれば、隣にいる。

食事をすれば、向かいにいる。

何かあれば、すぐに話せる。

そんな生活が、二人にとって当たり前になり始めていた。

ある日の夜。

二人は寝台に並んで横になっていた。

「ルーファンス」

「ん?」

「……このまま、ずっと一緒にいられるかな」

リリアの声には、ほんの少しだけ不安が混じっていた。

ルーファンスは、彼女の手を握った。

「いられるさ」

迷いのない声だった。

「もう、誰にも君を渡さない」

「……約束?」

「ああ。約束する」

リリアは安心したように微笑んだ。

そして、そのままルーファンスの肩に頭を預ける。

二人は身体を重ねることなく、ただ寄り添って眠った。

それが二人にとって、幸せだった。

普通の夫婦なら当たり前のように過ごす日々。

朝起きて。

一緒に食事をして。

くだらない話をして。

笑って。

夜になれば、同じ寝台で眠る。

二人が望んでいたのは、そんな何気ない暮らしだった。

けれど――。

その幸せは、あまりにも短かった。

三週間。

たった三週間だった。

二人がようやく手に入れた「普通の夫婦」としての時間は、それだけだった。

この時の二人は、まだ知らない。

もうすぐ、この穏やかな日々が終わることを。

そして再び、二人の前に「国」という大きな壁が立ちはだかることを。

ただ今は――。

互いの温もりを感じながら、静かな夜を過ごしていた。