私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

玄都国での暮らしにも、少しずつ慣れていった。

朝は一緒に食事をする。

昼は庭を散歩したり、街へ出たりする。

夜は同じ部屋で、その日にあったことを話す。

そんな毎日が続いていた。

「今日、街で面白いものを見つけたんです」

「何を?」

リリアが楽しそうに話すと、ルーファンスは笑いながら耳を傾ける。

以前なら、こんな時間を想像することさえできなかった。

誰かの許可を得る必要もない。

国同士の関係を気にしながら、互いの気持ちを隠す必要もない。

ただ、一緒にいられる。

それだけだった。

ある日の午後。

二人は庭の木陰で並んで座っていた。

リリアがふと、ルーファンスの肩にもたれる。

ルーファンスも何も言わず、そのまま彼女の隣にいた。

「……幸せですね」

リリアが小さく呟く。

「うん」

ルーファンスも、静かに答えた。

二人は身体の関係を持つこともなかった。

急ぐ必要などないと思っていた。

ようやく、誰にも邪魔されずに二人で過ごせるようになったのだから。

夜になれば、同じ寝台で眠る。

眠る前に今日の出来事を話して、朝になれば「おはよう」と言う。

それだけの繰り返し。

けれど――。

二人にとっては、その何気ない日々こそが、ずっと欲しかったものだった。

「もっと早く、こうやって暮らせていたらよかったのに」

リリアがそう言うと、ルーファンスは彼女の手を握った。

「今からでも遅くない」

「……そうですね」

二人は微笑み合った。

この幸せが、いつまでも続くと信じていた。

少なくとも、この時の二人は――。

この穏やかな日々が、あとほんの少ししか残されていないことを知らなかった。