私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

翌日。

玄都国の宮殿にある小さな礼拝堂。

そこには、誰もいなかった。

祝福する者もいない。

家族も、友人も、国の重臣もいない。

ただ、ルーファンスとリリアの二人だけ。

二人は礼拝堂の中央で向かい合っていた。

華やかな衣装もない。

大勢の人々に囲まれることもない。

それでも――。

二人の表情には、初めて穏やかな笑顔が浮かんでいた。

「リリア」

ルーファンスが、彼女の手を取る。

「これから先、何があっても君と一緒にいる」

リリアは涙を浮かべながら頷いた。

「私も。どんなことがあっても、あなたと一緒にいます」

二人は、互いの目を見つめた。

これまで何度も、誰かに決められた道を歩いてきた。

けれど、今だけは違う。

自分たちで選んだ。

自分たちの意思で、ここにいる。

そして――。

二人は夫婦としての誓いを交わした。

誰にも祝福されなくてもいい。

誰にも認められなくてもいい。

ただ、互いが互いを選んだ。

それだけで十分だった。

誓いを終えると、ルーファンスはリリアを見つめた。

「……これで、ようやく君は俺の妻だ」

リリアは涙を拭いながら微笑んだ。

「はい。あなたも、私の夫です」

二人は静かに顔を近づける。

そして――。

二人にとって二度目となるキスを交わした。

それは、誰かに決められた婚姻ではなかった。

二人自身が選んだ、二人だけの結婚だった。

ようやく二人は、心から望んだ夫婦になった。