私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

「あなたに……会いたかった」

リリアの言葉に、ルーファンスはしばらく何も言えなかった。

会いたかった。

その言葉を、どれほど聞きたかったか。

けれど、今ここにいる彼女は、自分の妻ではない。

リリアにはエリオットがいる。

そして自分にも、クラリスがいる。

それでも――。

ルーファンスは、リリアから目を逸らせなかった。

「……俺も、会いたかった」

ようやく出てきた言葉は、それだけだった。

リリアの目から、また涙がこぼれる。

「私……ずっと考えてたの」

「何を?」

「私が、どうしてこんなに苦しいのか」

リリアは胸元を押さえた。

「エリオットは、何も悪くないの」

「分かってる」

「優しくしてくれる。私を責めない。私の気持ちを待ってくれてる」

それでも、とリリアは続けた。

「それでも、私は……あなたじゃないと駄目だった」

ルーファンスの瞳が揺れる。

「リリア……」

「子供のことを言われて、初めて分かったの」

涙を拭いながら、リリアはルーファンスを見つめた。

「私は、あなた以外の人と家族になることを考えられなかった」

一歩、ルーファンスが近づく。

けれど、それ以上は進めなかった。

「……俺たちは、もう結婚している」

その言葉に、リリアは小さく頷いた。

「分かってる」

「それでも……」

ルーファンスの声が震える。

「俺も、ずっと君を忘れられなかった」

リリアが顔を上げる。

「結婚しても、君のことばかり考えていた」

「……ルーファンス」

「君が幸せなら、それでいいと思おうとした」

ルーファンスは苦しそうに笑った。

「でも、無理だった」

二人の間に、静かな沈黙が落ちる。

そして――。

リリアが、涙を浮かべたまま微笑んだ。

「私も、無理だった」

その言葉だけで、十分だった。

二人はようやく、自分たちの気持ちが同じだったことを確かめた。

そして、ゆっくりと距離を縮める。

初めて出会ったあの日から、ずっと心に残っていた想いを確かめるように。

ルーファンスが、そっとリリアに顔を近づける。

リリアも目を閉じた。

そして――。

二人は初めて、唇を重ねた。