私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

その夜。

ルーファンスは、眠ることができなかった。

隣の部屋にはクラリスがいる。

けれど、彼の心はすでに別の場所にあった。

――玄都国。

リリアと初めて出会った場所。

二人で話した庭園。

何度も「また会いたい」と思った場所。

そして、自分たちの運命が大きく変わった場所。

ルーファンスは窓辺に立ち、夜空を見上げた。

リリアは今、どうしているだろう。

幸せなのだろうか。

それとも――。

あの夜のように、まだ泣いているのだろうか。

考えれば考えるほど、胸が苦しくなった。

それでも、もう一度だけ会いたかった。

今度こそ、自分の気持ちを伝えたい。

たとえ、彼女が自分を選ばなくても。

たとえ、もう二度と一緒になれなくても。

ただ一度だけ、直接話したかった。

翌朝。

ルーファンスは、皇帝のもとを訪れた。

「父上。少しの間、玄都国へ行きたいのです」

皇帝は驚いたように息子を見た。

「玄都国へ?」

「はい」

「何のために?」

ルーファンスは、少しだけ沈黙した。

そして、静かに答えた。

「……確かめたいことがあります」

それ以上は何も言わなかった。

皇帝は息子の表情を見つめた。

やがて、深く息を吐く。

「好きにしろ」

許しを得たルーファンスは、すぐに旅の準備を始めた。

クラリスにも、しばらく玄都国へ向かうことを伝えた。

クラリスは何も聞かなかった。

ただ静かに頷いた。

そして――。

ルーファンスは一人、玄都国へ向かう旅に出た。

向かう先にいるのは、ただ一人。

自分が決して忘れることのできなかった女性だった。