私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

リリアの婚姻から、しばらくの時が過ぎた。

マ国でも、ルーファンスの婚姻の日が近づいていた。

相手は、以前から婚約者として定められていたクラリス。

両国の関係を保つためにも、この婚姻を取りやめることはできなかった。

ルーファンス自身も、それを理解していた。

そして迎えた婚礼の日。

皇宮は華やかな祝福に包まれていた。

クラリスは、美しい花嫁姿でルーファンスの隣に立っていた。

けれど、ルーファンスの心に喜びはなかった。

彼の心にいるのは、ただ一人。

リリアだった。

玄都国の庭園で初めて出会った時のこと。

宴で、彼女が自分の政略結婚の相手だったと知った時のこと。

そして――。

リュミエラ国の新婚部屋の灯りが消えた夜のこと。

すべてが、今も鮮明に残っている。

それでもルーファンスは、何も言わなかった。

クラリスにも罪はない。

彼女もまた、この婚姻を受け入れている。

だからこそ、自分の気持ちだけで婚礼を壊すことはできなかった。

二人は夫婦となった。

その事実だけが、静かに残った。

そしてその夜。

ルーファンスとクラリスは、新婚部屋へ入った。

扉が閉じる。

ルーファンスは、しばらく何も言わなかった。

やがて、クラリスが静かに口を開いた。

「……殿下」

ルーファンスは彼女を見る。

そして、決意したように言葉を口にした。

「クラリス。君に伝えておきたいことがある」

その声には、迷いがなかった。

「俺は――君を愛していない」