私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

婚礼が終わると、リリアはエリオットとともに皇宮の奥へと向かった。

二人を待っているのは、新婚夫婦のために用意された部屋だった。

ルーファンスは、その姿を少し離れた場所から見つめていた。

リリアの隣には、エリオットがいる。

自分ではない男が、彼女と並んで歩いている。

その光景を見ているだけで、胸が締めつけられるようだった。

それでも、ルーファンスは動かなかった。

「……」

強く拳を握る。

今すぐ追いかけたい。

その手を取って、ここから連れ出したい。

何度そう思ったか分からない。

けれど――。

ルーファンスは、その場に立ち尽くした。

国のため。

両国の未来のため。

そして、リリア自身を傷つけないために。

やがて二人の姿が廊下の向こうへ消えていく。

ルーファンスは、ただその背中を見送った。

「……なぜ、あの時……」

小さな声が漏れる。

なぜ、あの時政略結婚を受け入れなかったのか。

もし、あの時受け入れていたら。

今、自分は彼女の隣に立っていたのだろうか。

「もっと……早く出会いたかった」

誰にも届かない声だった。

ルーファンスは顔を伏せ、もう一度強く拳を握りしめた。

涙は流さなかった。

ただ、胸の奥に込み上げるものを必死に押し込める。

そして、誰もいなくなった廊下に一人残された。