私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

婚礼の日。

リュミエラ国の皇宮は、朝から華やかな空気に包まれていた。

多くの貴族や各国からの客人が集まり、祝福の言葉が交わされる。

その中に、ルーファンスの姿もあった。

マ国の第一皇子として、静かにその場に立っている。

けれど、その胸の内は穏やかではなかった。

やがて、婚礼の場にリリアが姿を現した。

美しく着飾ったその姿を見た瞬間――。

ルーファンスの呼吸が止まりそうになった。

目を逸らすことができない。

自分が愛した女性が、別の男の隣に立っている。

その現実が、目の前に突きつけられる。

リリアもまた、ルーファンスの姿を見つけた。

ほんの一瞬、二人の視線が重なる。

言葉は交わせない。

けれど、その一瞬だけで互いの気持ちは伝わった。

――苦しい。

――どうして、こうなってしまったのか。

ルーファンスは、強く拳を握った。

爪が手のひらに食い込むほどに。

叫びたい。

今すぐリリアを連れて、この場所から逃げ出したい。

けれど、そんなことはできない。

自分はマ国の第一皇子。

リリアはリュミエラ国の第一皇女。

二人がここで逃げれば、両国の関係はどうなる。

戦争を避けるために、両国の皇帝が選んだ婚姻なのだ。

自分たちの感情だけで、それを壊すことはできない。

リリアもまた、胸の奥で何度も叫んでいた。

――この人と一緒にいたい。

――この人以外は嫌。

けれど、唇から言葉がこぼれることはなかった。

二人はただ、何もできないまま、その場に立っていた。

そして婚礼は、静かに進んでいった。