私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

リュミエラ国では、リリアの婚姻の日が決められた。

相手は、かつてから婚約者として定められていたエリオット。

皇帝が決めた婚姻を、覆すことはできなかった。

リリア自身も、それを分かっていた。

だから、反発することもなく、その日を受け入れた。

けれど――。

リリアの心には、別の人がいる。

玄都国の庭園で出会った青年。

今では、その名前も知っている。

ルーファンス。

その名を思い浮かべるだけで、胸が苦しくなる。

そんなリリアの気持ちを、エリオットは分かっていた。

「リリア」

二人きりになった時、エリオットが静かに声をかけた。

「……はい」

「君の心に、僕ではない人がいることは知っている」

リリアは何も言えなかった。

「だから、無理に僕を好きになる必要はない」

その言葉に、リリアは顔を上げた。

エリオットは、穏やかに微笑んでいた。

「僕は君を責めないよ」

「エリオット……」

「いつか君が僕を見てくれる日が来るまで、待つ」

優しい言葉だった。

だからこそ、リリアの胸は余計に苦しくなった。

エリオットは悪くない。

何も悪くない。

ただ、自分の心には、もう別の人がいる。

それでも婚姻の日は、少しずつ近づいていた。

そしてその婚姻の日――。

遠く離れたマ国から、ルーファンスもまた、リュミエラ国へ向かっていた。

国同士の関係を保つため、第一皇子としてこの結婚式に出席するためだった。

けれどルーファンスは、まだ知らなかった。

この日が、自分にとって最も苦しい一日になることを。