私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

宴が終わっても、ルーファンスとリリアは、しばらく言葉を交わすことができなかった。

あまりにも突然のことだった。

昼間まで、ただの一人の青年と少女だと思っていた。

名前さえ知らなかった。

それなのに――。

相手は、自分が一度は結婚を拒んだ相手だった。

やがて、それぞれの国へ戻る時が来た。

ルーファンスはマ国へ。

リリアはリュミエラ国へ。

二人は一度も、互いに声をかけることができなかった。

馬車へ向かう途中、ルーファンスは何度も後ろを振り返った。

その先にいるリリアの姿を、もう一度だけ見たかった。

リリアもまた、遠ざかっていくルーファンスの姿を見つめていた。

言いたいことは、たくさんあった。

けれど、何を言えばいいのか分からない。

「……どうして」

リリアは小さく呟いた。

もっと早く知っていれば。

あの政略結婚を断らなければ。

そうすれば、何かが変わっていたのだろうか。

同じ頃、ルーファンスもまた、馬車の中で一人考えていた。

庭園で笑っていた少女。

もう一度会いたいと思った少女。

その相手が、まさか自分の政略結婚の相手だったなんて。

運命とは、時に残酷なものなのだと――。

ルーファンスは、初めて思った。

そして二人は、それぞれの国へ戻っていった。

まだ、互いの気持ちを言葉にはできないまま。