私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

それから数日。

ルーファンスは、玄都国での公務の合間に、何度もあの庭園へ足を運んでいた。

けれど、少女の姿はなかった。

今日もいない。

それでも、なぜか庭園へ来てしまう。

あの日、ほんの短い時間話しただけなのに。

名前も知らない。

どこの国から来たのかも知らない。

それなのに、気づけば彼女のことを考えていた。

――もう一度、会いたい。

同じ頃。

リリアもまた、玄都国の庭園を訪れていた。

けれど、そこに彼の姿はなかった。

あの日の青年。

名前も知らない。

どこの誰なのかも知らない。

それでも、庭園に来るたびに、どこかで彼が現れるような気がしていた。

「……また会えたらいいのに」

小さく呟いた言葉が、静かな庭園に消えていく。

二人はまだ、お互いの名前さえ知らない。

それでも、たった一度の出会いが心に残っていた。

そして、その日の夕方。

庭園を出ようとしたリリアが、ふと足を止めた。

向こうから、見覚えのある姿が歩いてくる。

目が合った。

「……!」

二人とも、同時に足を止める。

ほんの一瞬、驚いたように見つめ合った。

そして――。

どちらからともなく、笑った。

「また会えましたね」

「……はい」

名前も知らない。

身分も知らない。

それでも二人にとって、その瞬間は嬉しかった。

まだ二人は知らなかった。

この偶然の再会が、二人の運命を大きく変えていくことを。