私のイケメンヒーローは、どこかおかしい

「この庭園には、よく来られるんですか?」

ルーファンスが尋ねると、少女は少し考えてから首を横に振った。

「いいえ。今日、初めて来ました」

「俺もです」

思わず答えると、少女が小さく笑った。

「では、同じですね」

その一言に、ルーファンスも自然と笑みを返した。

身分も、名前も知らない。

それなのに、不思議と話しやすかった。

二人は庭園を歩きながら、他愛のない話をした。

玄都国の街並みのこと。

庭園に咲く花のこと。

それぞれの国で好きな食べ物のこと。

どれも、初対面の相手と交わすような特別な話ではない。

それでも、時間が過ぎるのはあっという間だった。

「そろそろ戻らないと……」

少女がそう言った時、ルーファンスは名残惜しさを感じた。

もっと話していたい。

まだ聞きたいことがたくさんある。

けれど、引き止める理由もなかった。

「……また、ここに来ますか?」

気づけば、そんな言葉が口から出ていた。

少女は少し驚いたように目を瞬かせる。

そして、柔らかく微笑んだ。

「はい。私も、また来たいです」

その言葉を聞いた瞬間、ルーファンスの胸がわずかに高鳴った。

「では、また」

「はい。また」

二人はそれぞれの道へ戻っていった。

振り返ることはなかった。

けれど、二人とも同じことを考えていた。

――また、会いたい。

まだ、名前すら知らない相手。

どこの誰なのかも分からない。

それでも、もう一度会いたいと思った。