恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



書類の束をまとめながら何気なく聞くと、ユリウスは顔を引きつらせる。

そして、苛立ちを隠そうともせず、舌打ちをする。


「作るも何も、あの馬鹿、惚れ薬を完成させるまで、研究予算を凍結すると脅してきた」

「...は?」


聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、手を止める。

イザベラは慌てて、ユリウスに駆け寄る。


「えっ、凍結って...どこまでですか?」

「ここの研究室に回される予算、全てだ」

「は、えっ、つまり、わたしのお給料も含まれたりなんかします?」

「......そうなる、はずだ」


さすがのユリウスもきまり悪そうに、視線を逸らしてくる。

......わたしの、生活費。

今まではユリウスが勝手に引き受けたことだから、なるべく関わらないようにしてきた。

しかし、給料が絡んでくるとなると、死活問題になり、話は別だ。


「先生!!」


ユリウスの両腕を力強く掴み、彼を見上げる。

紫水晶のような瞳が戸惑いで揺れている。


「頑張って、惚れ薬完成させましょう!!わたしも全力で協力しますので!!!」


突然の豹変ぶりに驚きを隠せないユリウスは、目を瞬かせながら、神妙な表情でイザベラを見下ろしている。

こうして、恋を知らない天才魔術師とその助手の、惚れ薬の研究が始まるのであった。