恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで


数十分後、早めの昼休憩を終え、終わりが見えない書類作業に取りかかっていると、研究室の扉が勢いよく音を立てて開かれる。

顔を上げると、呼吸が乱れ、肩で息をするユリウスと目が合った。


「...何か、あったんですか?」

「...何か、あったではない!あの男、突然剣を振り回し、えらい剣幕で追い回してきたんだぞ!!」


信じられないことでも起こったかのように、眉をつり上げ、憤慨しているユリウスだが、イザベラはその様子でおおよその事態が把握できてしまった。


「王太子殿下に、何を言ったのですか?」


記憶の中の王太子殿下は無防備な相手に突然、剣を振り回すような野蛮な人間ではなかったはずだ。

そうなると十中八九、そうなる原因を作ったのは目の前で不機嫌そうに顔を顰めるユリウスに決まっている。


「何も特別なことは言っていない!話を聞いているうちに、あいつが意中の相手に衝動的に触れたくなるとかぬかすから、性行為がしたいんだったら、惚れ薬ではなく媚薬でも盛ってろと助言したら、顔を真っ赤にさせて突然追いかけ回してきたんだ!!意味がわからない!!」


本気で自分が原因だと思ってなさそうな態度を取るユリウスに、イザベラは呆れて何も言えなかった。


「...それで、惚れ薬は作れそうですか?」