恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



部屋中、山のように積まれた手つかずの書類を指差し、イザベラはユリウスに詰め寄る。

しかし、ユリウスはそんなこと知るかと言わんばかりに山積みの書類には目もくれず、また一口、コーヒーを口に含む。

そんなユリウスの態度に、イザベラは拳を握り、わなわなと震わせる。

この男、稀代の天才魔術師と謳われるユリウス・フローベルの助手になってから早1年。

いったい何度目かわからない怒りの衝動が、イザベラの体中を駆け巡る。

しかし、車輪付き椅子を器用に使いこなし、部屋中を移動するユリウスの姿を眺めているうちに、徐々に収まってくる。

いけない、先生は成人男性に見えて、中身は赤ちゃんなのだから、わたしが大人にならなければ。

気持ちを落ち着かせるために、大きく深呼吸をする。

ユリウスのわがままは今に始まったことではない、一時の興味で仕事が滞ることなんて今まで何度もあったはずだ。

まぁ、それが溜まりに溜まりまくって、今の書類だらけの研究室という現状になっているのだが。しかし、これでも少なくなったほうだ。

イザベラが助手として配属された時なんて、書類の山が雪崩を起こしていて、足の踏み場もない状態だった。

大きくため息を吐くと、部屋の奥で何かが盛大に落ちる音が聞こえてきた。

慌ててその場に駆け寄ると、膨大な魔術書の下敷きになっているユリウスを発見する。