恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



こんなに悪態をつきながらも、ユリウスは戻ってきて開口一番に惚れ薬を作ると宣言したのだ。

話を聞いている限り、引き受ける流れにはなっていない。


「あの馬鹿の結婚などは心底どうでもいい。だが、惚れ薬。こいつには興味をそそられる。なにせ、まだ誰も作ったことのない代物だ」


ユリウスは頬杖をつき、得意げに口角を上げる。

この国に魔術が学問として扱われ始めたのはほんの百数年前、最近のことである。

魔術のおかげで医療技術が飛躍的に上がり、様々な薬が魔術により精製され、今では治せない病はないとまで言われている。

確かに、世に出されている薬の中で、惚れ薬なんてものは存在しない。

しかし、それは倫理観的に危ういものだと、一般的な常識がある魔術師が考えてみればすぐわかることだ。

ーーそう、常識がある魔術師ならばの話だ。


「まさか、先生。自身の好奇心を満たすために、引き受けたんですか?」

「当たり前だ。そうでなければ、あの馬鹿の依頼など誰が受けるか」

「他にもいっぱいやらなきゃいけないことあるんですから、そんな理由で引き受けないでください!!」