恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



すると、後ろから車輪が滑る音が聞こえてきたので足を止め、後ろを振り返ると少し距離はあるがユリウスが椅子を使って移動しているのが見えた。

イザベラからの視線に気付くと、動きを止め、またそっぽ向く。

試しにもう一度歩き出すと、また車輪の音が聞こえてくる。

そして、イザベラが足を止めると、その音も止まる。

近付こうとすると離れていくくせに、離れると近付いてくる。

もう考えるのはやめようと、イザベラは研究室に向かって真っ直ぐ前だけ見て、歩き出した。

その後しばらく、イザベラはユリウスの不可解な言動に振り回され続けた。

ところが数日後、彼は何事もなかったかのように接してきたので、本当に何なんだこの人はと、さすがにキレそうになった。

胸の不調にも慣れたらしく、慣れるとはどういうことなのだろうと、イザベラは首を傾げるしかなかった。