「それで、そのままここまで連れてきたと...」
「はい、頑張りました!!」
拳を握りしめ、力強くイザベラが答えると、マルコーは眉間を手でつまみ、大きくため息を吐いた。
「...何年もここで医者をやってきたが、そうやって病人を連れてきたのはお前が初めてだよ...」
「そう、ですよね...」
嫌がるユリウスをここまで連れてきた達成感で感覚がおかしくなっていたが、車輪付き椅子のまま移動する成人男性は絵面的に中々ヤバいのではないのかと今更ながらその異常性に気付いてしまった。
恐る恐るユリウスに振り向くと、研究室からずっと座っている車輪付きの椅子の上で足と腕を組み、今にも人を射殺せそうな視線をイザベラに向けていた。
かなりご立腹の様だ。
しかし、せっかくここまで来たのだから、診察はしてほしい。
飛んでくる視線を無視して、イザベラはユリウスの椅子の背もたれ部分を後ろから掴み、マルコーの前まで押していく。
「それじゃあ、マルコー先生。お願いします」
「勝手に進めるな」
「この状態で押し付けてくるのか...」
二人から抗議にも聞こえる不満の声に一切耳を貸さず、イザベラはユリウスの後ろに控え、医務室の壁になることに徹した。

