恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



しかし、それを理解しようとすること自体が間違いなのだと、この数か月で学んだ。

イザベラは諦めて、体温計を元の場所に戻した。

それでも正常な判断が出来ないぐらいの高熱に侵されているという可能性は捨てきれないため、イザベラは自席に座っているユリウスの傍らに近付いた。

警戒するように体を逸らすユリウスをよそに、イザベラはその額に手を当て、もう片方の手を自分の額に当てた。

小さく息を呑む音が聞こえたが、イザベラは気にせずそれぞれの手に伝わってくる温度を比べる。


「うーん、本当に平熱ですね。むしろ、わたしより低いぐらいです」


視線をユリウスに向けると、どこか緊張しているような面持ちのまま固まっている。


「...先生?」


反応が返ってこないので、呼びかけると大袈裟なぐらい体を揺らしたユリウスは我に返ったのかイザベラを鋭く睨んだ。


「体温は問題ないと言ったはずだ。いつまで触れてるつもりだ、離れろ」


乱暴に額に当てていた手を払い除けられ、イザベラは一歩後ろに下がる。

どことなく落ち着かなそうにそわそわしているユリウスを眺めながら、イザベラは顎に手を当て考え込む。