恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで




「体調が芳しくない」


朝、研究室に入るなり、仏頂面のユリウスが不機嫌そうに声を上げたので、イザベラは耳を塞ぎたくなった。

助手になってから半年が経過し、そろそろ職場に慣れてもいいはずなのだが、ユリウスが想像を絶する変人であることでイザベラは毎日頭を悩ませていた。

何かしらの不調や文句を訴えることは日常茶飯時だ。

姿が見えない時などもっと最悪で、どこかしらで倒れていたり、埋もれていたりするので、救出するとこから一日が始まる。

おかげで仕事の大半がユリウスのお世話になりつつある現状にイザベラは助手になったことを後悔し始めていた頃だった。

しかし、自分から志願したイザベラは途中で逃げ出すことに抵抗がある。

最後まで責任をもってこの変人に付き合い、職務を全うしようと気合を入れ直すためにイザベラは自身の頬を叩いて、ユリウスに向き直った。


「どこが悪いんですか?」

「...胸のあたりが痛い」


動悸が乱れているということなのかと解釈したイザベラは救急箱から体温計を取り出し、ユリウスに差し出した。


「風邪ですかね、一応体温を測ってください」

「体温は正常だ」

「測るだけでも測ってください」

「断る」


何故そこまで頑なに拒否するのかはわからない。