恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



追い詰められて、今にも泣き出しそうなイザベラに、マルコーは面倒くさそうにため息を吐いた。


「...少し前になるか。あの男が胸の不調を訴えてここに来た時のこと覚えているか?」


呆れ気味のマルコーの言葉にイザベラは小さく頷いた。

あれは確か、ユリウスの助手になって半年経ったぐらいの時だったとイザベラは記憶している。

突然、胸が痛いと騒ぎ出したので、マルコーに診てもらおうと医務棟に連れ出したのはいいが、診断結果に納得いかないユリウスが暴れて、追い出されたのを覚えている。


「あの時、不調の原因を聞いたら、いつも口うるさいあいつが急に口籠って黙ったと思ったら、しきりに後ろに控えていたお前を気にしていた」

「...そうでしたっけ?」


細かいところまではすぐに思い出せず、イザベラは考え込むように首を傾げる。


「その時のことを、よく思い出してみろ。当時のお前が気付けなかったことが、今ならわかるかもしれない」


半信半疑のイザベラだったが、マルコーに言われた通り、素直に当時のことを思い出してみることにした。