恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



やはり倒れてしまったかとイザベラは小さく肩を落とす。

完全に意識を手放す直前の記憶では、廊下で倒れたはずだ。

きっと通りすがりの誰かが、医務室まで運んでくれたのだろう。

自分の管理不足で他人に迷惑をかけてしまい申し訳ない気持ちで頭がいっぱいになっていると、病室の扉が勢いよく開かれた。


「病人が項垂れてるんじゃねぇ!!」


叱咤するような声に顔を上げると、ボサボサの黒髪に薄汚れた白衣を羽織った男性が扉の前で仁王立ちしていた。


「マルコー先生...」


大股で部屋に入ると、マルコーは無遠慮にベッドの傍らのパイプ椅子に座り、不躾に右足をもう片方の膝にかけた。

持っていたバインダーの紙を数枚捲り上げ、内容を確認すると、怪訝な表情をイザベラに向ける。


「体重減少、倦怠感、集中力低下。典型的な栄養失調の症状だ。何故、倒れるまで放置した」

「それは...」