恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



ユリウスの研究室からイザベラは目的地まで、ゆっくりとした足取りで向かった。

体はだいぶキツイが、無理したら歩けないこともないので、何度も立ち止まりながらも前に進む。

それにしてもユリウスがイザベラの不調に気付くとは驚きである。

魔術以外に興味を持つことのないユリウスが他人の不調に気付くことさえ奇跡的なのに、あろうことかそれを気に留め続けるなど、今まであっただろうか。

それよりこのままだと本当に倒れかねないので、医術特化研究室から試作品でもいいから栄養剤のサンプルを貰おう。

そのためには、早くこの書類を届けに...

そう思って顔を上げた、その時、視界が大きく揺れた。

やばい...!!

膝から崩れ落ちそうになったが、咄嗟に壁に手をついて、すんでのところで踏ん張った。

けれど、そのままゆっくり体を壁にもたれかける。

耳鳴りがひどい。

体に力が入らない。

重力に逆らえず、イザベラの体が膝から床に落ちる。

手を床につき、なんとか上体を起こそうとするも、視界がどんどん狭まっていく。

とうとう力尽き、床に倒れ込み、意識が途切れそうになる。


「イザベラ!!!」


その時、遠くの方から聞き慣れた声が自分の名前を叫ぶのが聞こえたが、イザベラはそのまま目を閉ざし、意識を手放した。