恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



「本当に、大丈夫です。ただの寝不足なので、コーヒーでも飲んだら、なんとかなりますよ」


手を引こうとするも、ユリウスの手の力が緩まない。


「食事はとったか?」

「少なくとも、先生よりは食べてます」


軽口で誤魔化そうとするも、実際は食べられていない。

疑うような視線に耐えきれなくなり、イザベラはそれから逃れるように立ち上がろうとするも、視界がぐらつく。

しかし、このまま膝をついたらもう誤魔化しきれないとなんとか踏ん張る。


「本当に、本当に大丈夫ですから!!!先生はわたしなんかより、ご自身の心配をなさってください!!!」

「......そうか」


明らかに納得していない様子のユリウスだったが、イザベラの気迫に根負けしたのか、掴んでいた手の力が少しだけ緩む。

その隙を見逃さなかったイザベラは、手を引き、逃げるように部屋の扉に向かう。


「それじゃあ、わたしこの書類を提出してきますので。先生はちゃんと仕事してくださいね。また勝手にいなくならないでください」


不服そうな表情をしているユリウスを研究室に残し、イザベラは足早にその場から離れた。