恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



そろそろ本気でまずいかもしれない。

重たい体をなんとか動かし、イザベラは床に散らばった書類を拾い上げる。

つい先程、自分で躓き、積んであった書類の山を派手にぶち撒けてしまったのである。

本来ならそれはユリウスの役割なのだが、ここ最近イザベラは妙な気怠さを感じていた。

しかも、意図的に食事の量を減らしているので、原因は栄養不足であることは理解している。

来月分の家賃を確保するためにとうとう食費まで切り詰めなければならなくなってしまった。

ここ数日は一つのパンを三等分にして、一日を凌いでいるのだが、さすがにそろそろ限界かもしれない。

空腹は耐えられるのだが、頭が回らず、体が重い。

これだと仕事に支障をきたし、ユリウスに迷惑をかけてしまう。

なんとかしなければ。

回らない頭でぼんやりとそんなことを考えていたおかげで、目の前の書類を拾い上げる手が止まっている。


「おい」


イザベラは反応しない。