恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで



訳がわからないまま名前を呼ぶと、先ほどまで険しかったユリウスの表情が僅かに緩む。


「次、忘れたらタダでは済まさないからな」


恐ろしい脅し文句を言い残し、ユリウスは王宮へと足を向ける。

名前を忘れたこと、そんなに根に持っているのかと恐怖で体が固まっていると、ユリウスが振り返ってくる。


「何をしている、早く戻るぞ。イザベラ」

「......えっ!?あっ、はい!!」


名前を呼ばれたことに驚いて、一瞬反応が遅れてしまったが、イザベラはユリウスを追いかける。

隣に並ぶと、ユリウスは再び歩き出す。

心なしか、歩幅をイザベラに合わせてくれているような気がしたが、気のせいかもしれないとイザベラもユリウスに合わせて歩き出す。

やっぱり名前を呼ばれただけなのに、妙にくすぐったいなとしきりに耳を触るイザベラだったが、どうやらくすぐったいのは耳ではないらしいと気付く。

それじゃあどこがくすぐったいのだろうと首を傾げるも、わからなくて少しだけ困惑するイザベラなのであった。