恋を知らない天才魔術師が、惚れ薬を作るまで


「...お役に立てませんでしたか?」

「...いや、正確だ。正確だが、これだと対象人物がかなり限られる。そもそも、何故特定の相手のみに恋というような非論理的な感情が芽生えるのか説明されていない」


興味なさげに読んでたから流し読みしてるかと思ったら、しっかりと小説の要点を把握している。

こういうところはやはり侮れないなと、イザベラは返された資料を受け取る。


「やっぱり小説だと物語の盛りあげるために、現実味のない出来事で芽生える恋というのが多すぎますね。恋についての表現も抽象的で、もっと詳しく書かれてると思ったのですが...」


胸がはち切れそうとか、相手のことを考えると夜も眠れなくなるとか...

そんな内容ばかりで、どうしてそんなことが起きているのかの説明が一切されていない。

このままだと惚れ薬が完成するのに時間がかかってしまう。

そうなると、来月から生活費をかなり切り詰めていかないと生活できなくなってしまう。

どうにかして、この感情理解が乏しい、ユリウスに恋を理解してもらわないといけない。

危機的状況に若干焦りを感じるイザベラに反して、ユリウスは飽きてきたのか、視線を明後日の方向に向けて呆けている。

時折何かを閃いたように紙に魔術陣を描いては、出来に納得いかなかったのかぐちゃぐちゃと塗り潰していく。