キスから始まる恋は甘くて苦い

「あれは俺の……いや、うん、大丈夫だから」

 蒼一は否定しかけて言い直した。彼女の気が済むなら、謝罪を受け入れて消化させてあげた方がいいと思ったから。

「もう気にすんな」

 その言葉に、ほたるはうなずくのがやっとの様子だ。その姿が健気でつい守ってあげたくなってしまう。

 カワイイな……

 不謹慎だとわかっていてもそう思わずにはいられなかった。

「ほたる、メガネは?」

 教室に戻ってきた親友を見た瞬間、樋口桂(ひぐちけい)は驚きに目を見開いた。

「え? あっ……」

 我に返ったほたるは、そのとき初めてメガネを右手に握りしめていたことに気がついた。

「えっと……そう、目にゴミが入っちゃって」

 そして、つたない嘘をつく。

「そうなんだ。もう大丈夫?」
「うん」

 それ以上の詮索を避けるように急いで席へ着くほたる。