キスから始まる恋は甘くて苦い

「ちょっと腫れてるね。頭は打ってない?」
「あー……うん、打たなかった」
「そっか」

 平井は踵を返すとすぐにふたりの元へ戻ってきた。

「あなた、これを10分くらい患部に当ててくれる?」
「は、はい」

 保冷剤を差し出されたほたるは戸惑いつつもそれを受け取る。

「先輩、いいですか?」
「いいよ」

 断れる雰囲気ではなく、蒼一は素直に足を持ち上げた。

「失礼します」

 筋肉質な足におそるおそる保冷剤を置く。

「我慢できなかったら言ってくださいね」
「ああ、うん」

 真剣で神妙な面持ちを向けてくるほたるを安心させるよう笑顔を作る。蒼一は、わざわざ彼女にこの役を任せた平井を目で追った。
 視線を感じたのか、振り向いた平井はニコリと笑んで業務に戻った。
 詮索はしないけれど、想像はしているのだろう。

 俺たちの関係を。

 いや、まだなんの関係にもなっていない。

 だけど、さ……

「これで終わりにしたくはねえよな」

 心の声がそのまま出てしまった。

「えっ?」

 案の上、ほたるはキョトンとした顔で蒼一を眺めている。

「いや、あのさ。通学路が被ってんのに今日まで一度も会ったことがなかったなと思って」

 蒼一が慌てて話題を変えると、ほたるはパッと表情を明るくした。