キスから始まる恋は甘くて苦い

『昼休み、保健室の前で待ってるよ』

 そう約束した蒼一は、昼食も摂らずに保健室へ向かった。時間を決めるのをうっかり忘れていたからだ。

「タツミ先輩」

 ほたるはすでに保健室の前にいて、蒼一を見つけると駆け寄ってきた。

「早えな。昼飯まだだろ?」
「時間がわからなかったので」
「そうだよな」

 ふたりは顔を見合わせ、蒼一が明るく笑いかけた。

「……はい」

 メガネにふれたほたるが控えめに唇をゆるませる。

 なんか、遠慮がちだよな?

 蒼一は首をひねりながらも保健室の扉を開けた。

「失礼します」
「はーい。どうしたの?」

 養護教諭の平井が椅子から立ち上がり蒼一を見上げる。

「朝、自転車ごと転んだ」
「あなたが? ヤンチャねえ」

 平井は眉尻を下げて微笑み、ソファに座るようふたりを促した。

「どこが痛い?」
「右足のスネ。でも、もうそんなに痛くないよ」

 ソファに座った蒼一がぞんざいにズボンをめくる。その様子をかたわらで見守っていたほたるは、内出血を起こしている様子に目を見開いた。