キスから始まる恋は甘くて苦い

「思い出した? もしかして、今はあの子と付き合ってるとか?」

 瞳は蒼一の思っていることとは正反対のことを口にした。

「そんなの、本人に訊けばいいだろ」
「もしかして、焦ってる?」

 珍しくイラ立ちを隠せない様子の蒼一を見て、瞳は意外そうに目を丸くした。

「ねえ、あの子のこと好きなの?」
「…………」
「どこがいいの? あんな地味な子」

 なんと言われても不思議と怒りは湧かなかった。むしろ、ほたるの良さを見出しているのが自分だけということに優越感すら覚える。

「勝手に言ってろよ。じゃあな」

 瞳の挑発には乗らず、蒼一は背を向けて行ってしまった。

 なによ……

 出会った頃は優しかったけれど、今では相手にもしてくれない。

 無理もない、か。

 自らがしたことを悔やんでも、一度失った信頼を取り戻すことはとても難しいことを瞳はよくわかっていた。