キスから始まる恋は甘くて苦い

「はじめ」の声で試合が始まった。
 蒼一は白、先生が赤いタスキを背中に下げている。
 打撃時、審判の旗が二本以上上がった方が一本取ったということだと瞳が教えてくれた。
 赤の旗が二本上がり、先生が先取。
 ルールはよく知らなかったけれど、蒼一が苦戦しているのはほたるにもわかった。
 もしかして、本当はまだ足が痛いんじゃないかと不安がよぎる。

 本調子が出せないんじゃ……

 そんなことを思った瞬間、蒼一が前に飛び込み『面』と叫んだ。 白旗が三本すべて上がって、どうやら一本を取ったようだった。
  怪我の具合は多少影響しているのかもしれないけれど。大人相手に接戦しているということは相当実力があるのだろう。
 ほたるは心配するのをやめ、心の中で蒼一を応援し続けた。
 シンと、水を打ったように静まり返る道場。その中心には、蒼一がいる。

 辰巳先輩は、本当に。

 まるで彼だけにスポットライトが当たっているかのよう。

 カッコイイ……

 頭がぼんやりして、体もほてってきた気がする。
 熱気に当てられたのかもしれない。

 すごく、まぶしいな。

 剣道に打ち込んでいる蒼一は、誰よりも輝いて見える。
 いつまでも立ち止まっている自分が、もどかしくなるほどに。